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 第1回 「企業スポーツの限界と徳洲会陸上部への期待」

 平成13年4月1日、医療法人徳洲会が鹿児島を拠点とした短距離中心の陸上部を発足させた。監督には1年前休部になった城山観光陸上部の元監督宮崎博史氏が、選手も元城山観光陸上部から3名、その他の選手が5名、部長・監督合わせて全部で10名の企業運動部が誕生した。

 実は何を隠そう僕もその「元城山観光陸上部員」であり、またその中でも「主将」という大役を長年やってきた(名前だけ)。その僕が何故「徳洲会陸上部」にいないのか。現在、僕は僕で新たな道を進んでいる。昨年7月に「SCC(Sports Communication Circle)」という団体を発足させ、その運営をやっている。何故、そういう団体を作ったのか。1年前、城山観光陸上部が休部となった時に、日本におけるスポーツというものの地位の低さ、スポーツをする「場」の貧困さというものに気がついた。企業スポーツとは、アマチュアスポーツでは日本のトップ選手が集まる場所。そのトップ、ピラミッドでいうと1番頂点がぐらついている、頂点がぐらつくのは底辺がおかしくなっているから、スポーツの底辺とは? そう「生涯スポーツ」。子供も大人もみんなが集まって、リラックスできるスポーツの場、そういうものが日本にはほとんどない、特に陸上競技においては全くないと言っていい。そういう底辺をしっかりさせてこそのトップであると、僕はそういう思いから「SCC」を作った。

 そして、今回、徳洲会陸上部が発足した。昔の監督、仲間がいるとはいえ、僕は立場的には全くの部外者。徳洲会陸上部がどういった意義でスタートしたのか、また今後はどういった方向で活動していくのかはは定かではない。が、よく耳に入ってくるのは「トップ選手の受け皿」「トップを目指す」という言葉。

 企業スポーツの存在意義には3つがあげられる。1つめは「広告宣伝」として、2つめは「社内の士気高揚」として、3つめは「地域の活性化」のため。現在、日本各地で企業スポーツが衰退している。それは1つめの「広告宣伝」というものでしか企業側がスポーツをとらえていないから。景気が悪い、広告宣伝費を削ろう「まずは運動部の休部・廃部」となるわけ。でもそれは極当たり前の企業の論理。

 ではどうすればいいのか。僕は3つめの「地域の活性化のため」というのが重要なキーワードになってくると思う。2つめの「社内の士気高揚」。これは運動部が活躍することによって、社内の連帯感が生まれたり、社員の士気が高まるとそういった意味合いがある。これも大事。とても大事なことだが、これをもっと大きな視点から見てみる。社内の士気高揚だけではなく、3つめとからめて、地域と密着した活動をする、そしてそういう活動をする彼らが活躍をする、その企業だけではなく、地域全体の士気が高揚する。その地域が活性化する。企業にとって、宣伝広告としての運動部というものは、もう限界がある。そうではなく、地域の活性化、という観点から運動部の存在意義を見い出し、そして、医療法人徳洲会の「陸上部」ではなく、鹿児島の「徳洲会陸上部」となって欲しいと思う。そうなれば、会社の業績が落ちた、まずどこを削ろうか「運動部!」とそう簡単にはならず「いや、運動部は地域の宝だ。文化を育てるのは企業の使命、運動部は守ろうじゃないか。」そういう論理が企業の中からも出てくるのではないだろうか。

 今、本当に日本のスポーツは転機を迎えている。バブル期に大きく成長を遂げた「企業スポーツ」。しかし、バブル崩壊後も企業スポーツはそのままの形で存在してきた。しかし、世はたいへんな不況。今までと同じような感覚で活動していてはだめ。特に徳洲会陸上部員に中には1年前の辛い体験をしたものがいる。それを糧にして「スポーツなんかやってる場合じゃないだろう」ではなく、こういうご時世だからこそスポーツが率先して明るい話題を提供し、また地域の活性化のためにふんばる時ではないだろうか。徳洲会陸上部の今後に期待する。