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 第10回 「元バレーボール選手と」

 ダイエー、日立、イトーヨーカドーと、長年日本の女子バレーボール界を引っ張ってきた企業チームが、次々と休廃部になっている。リーグの存続自体も危ういという現状だ。

 そういった中、先日、女子バレーボールVリーグの元選手だったという女性と会った。以前、その中にいたものとしてこの状態をどう思っているのだろう。

 どういった活動状況だったのかを聞いてみた。 どのチームも専用の体育館があり、選手用の宿舎もある。会社には行くことはなくほぼ24時間バレー漬けの日々。この待遇はまさしく「プロ」。しかし、給与は一般の会社員と同じとのこと。これは「アマチュア」。

 「おかしな世界だとは思わなかった?」 僕は尋ねた。

 「もちろん思っていた。でも、それを言ってしまうと“バレーをやらせてあげてるのに文句を言うとは”という風に言われてしまう。所詮、会社員という枠ははみだせなかった。」

 求められていることは「プロ」。やっていることも「プロ」。でも、報酬と立場は「アマチュア」。それが企業スポーツの世界。

 戦後日本のスポーツ界をリードしてきたのは企業スポーツ。そしてその企業スポーツが1番成長したのはバブル期。企業は湯水のごとくスポーツに金をつぎこんだ。そして今、企業スポーツは「負の遺産」となった。

 「企業スポーツって本当におかしな世界だな。」 僕のつぶやきに彼女がこう答えた。 「結局、企業スポーツがどうのこうのということよりも、スポーツ本来の有り方を考え直さなくてはいけない。スポーツの1番底辺から構造改革しないといけないのでは?」 彼女から力強い声が返ってきた。彼女は今、生涯スポーツや知的障害のある人のスポーツ、または子供達へのスポーツ教室などをやっている。

  「スポーツの底辺を広げたい。」 彼女の今後に注目したい。