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 第3回 「『仕事』と『競技』の両立」

  陸上競技もシーズンインした。今年から僕は「選手」としてではなく、SCCの「スタッフ」として選手みんなを補助する立場として会場にいる。そんな中、いろんな人に会うと必ず聞かれることがある。

  「もう走らないの?」―――

 僕はこの質問をされると、はてなんと答えてよいものか困ってしまう。昨年の城山観光陸上部の休部から約1年。実質、一線から退いている。練習らしい練習もしていない。

 SCCは「スポーツとは誰からも強制されるものではなく、それぞれが自発的に楽しむスポーツというものが根底にあるべきだ」という主旨で作った団体。だから、僕もみんなと楽しみながらスポーツをやろうと思ってはいる。

 しかしその反面、4月29日の2回陸上記録会の一般男子100Mの10秒台中盤のレースなんか見ていてると、そこだけ空気が違うし、正直むずむずしてくる気持ちもある。僕の100Mの自己ベストが10秒46。以前は僕もあの空気の中にいたのだ。正直あの空気をもう1度味わいたいなという想いもある。

 しかし、僕にはもう何のバックアップもない。生きていくためには自分で仕事をとって、稼いでいかないといけない。よく「文武両道」とか「仕事とスポーツの両立」という言葉があるが、ほんとうにスポーツで限界ぎりぎりの勝負の世界を狙うのであれば「両立」なんてできない。100%スポーツにのめりこめば仕事はどうしてもおろそかになるし、仕事に100%没頭すればスポーツはどうしても片手間になる。つまり「両立」しようと思ったらどっちも中途半端になってしまうということ。

 走りたい気持ち。でも、その前に僕は1人の人間として生きていかなければならない。僕はその辺りの気持ちの整理ができていないままなのだ。